◎『半ぴどん』物語 むかし、大淀川のほとり跡江村(今の宮崎市跡江)に半ぴどんというとんちものがおりました。半ぴどんは、なりは小さいがいつもニコニコしている愛嬌もので大の酒好きでした。 さて、ある日のこと。五合ほど入ろうな小さなかめ壷と竹のひしゃくを持って、半ぴどんは庄屋さんの家を訪ねました。 「庄屋どん、すごいかめ壷の話を知っとるか?」 「なんじゃ半ぴ、血相かえて」 「これは、一年中真夏のように暑い国の不思議な壷で、その国では、この壷にためた雨水は、いつでも湧き出る泉のように枯れることがないそうな」 「ほう、それはそれは」 「オレは考えた。水が泉のように沸き出なら、酒ならどうじゃろう?」 「むむ。酒の湧き出るかめ壷か・・・」 「何なら庄屋どんの蔵の焼酎でも試してみらんか?もし、すごいかめ壷だったら、代官様にも教えてやらねば・・・」 五合の焼酎がいつでも満ちたかめ壷か・・・。そんなものを代官様に差し上げたら、さぞかし喜ばれるだろうな。ニヤニヤ笑いが込み上げてくる庄屋さんに、 「試しに五合の焼酎を三日三晩、オレが預かりましょう。夜な夜な焼酎がどうなるか、寝ずに見張りますよ」と半ぴどん。 庄屋さんは、かめ壷に五合の焼酎を入れ、半ぴどんに預けることにしました。 そして、四日目の朝。半ぴどんは大事そうに小さなかめ壷を抱えてきました。 「庄屋どの、こりゃ大変なかめじゃ!五合の焼酎が泉のような水になってしもうた」 「な、なに?!」さすがの庄屋さんもびっくり。 「すごいかめ壷じゃ。試しに焼酎をひしゃくで飲んでみたら、飲んだ分だけ水が湧き出てきよった。全部飲んでみたら、ほれこのとおり」 ひしゃくですくって飲んでみると、それは丸っきりの水であった。 がっくりした庄屋さんは、三日三晩、おいしい焼酎にありついた半ぴどんのニコニコ笑顔にさえ、気づかぬ様子。 昔々のお話です。 |